猫を保護していたら多頭飼育崩壊に近づいていました ―私は何匹まで猫を飼えますか?

人生・生活,保護活動,動物愛護,多頭飼育崩壊

私は何匹まで猫を飼えますか?

猫の保護活動をしているAさんから、こんなご相談をいただきました。
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私は数年前から猫のレスキューを始めています。
現在、家にはだいたい15匹くらいいます。
飼えなくなってしまったという相談や、子猫を拾ったという人から依頼を受けると、どうしても断ることができません。
古い二階建ての一軒家に住んでいるので、部屋数はあります。
一人暮らしですが、猫の世話を手伝いに来てくれる方もいます。
「これ以上増やさないほうがいいのでは」と言われます。
でも、自分では、まだいけるような気がしています。

最近、多頭飼育崩壊のニュースをよく見ます。
あんなふうにはなりたくない。
そのためにはどうしたらいいのでしょうか。

猫は何匹まで飼えるのでしょうか。
何匹以上が多頭飼育崩壊なのでしょうか。

譲渡会に行っても、以前より猫をもらってくれる人が減りました。
家には高齢の猫や、腎臓病の猫もいます。
子猫のように、すぐに譲渡できる子ばかりではありません。

以前はご寄付もよく集まりましたが、今は厳しく、貯金を使っています。
それでも、お願いされると、引き取ってしまいます。
猫には罪がないですから。
A子

多頭飼育になる構造

Aさんへ
メールをありがとうございます。
Aさんは、本当に優しい方なのだと思います。
その優しさで、これまでたくさんの命が救われてきたはずです。
でも同時に、こう感じました。

このままでは、ある日、静かにバランスが崩れてしまうかもしれない——

私の率直な感想であり、不安でもあります。

理由は以下です。

① 優しさから、引き取りを断れない
→ 猫は増え続けている

② 一方で譲渡は減っている
→ 猫が外に出ていかない

③ 入る数が多く、出る数が少ない
→ いずれ満員になります

④ ご寄付が減り、貯金に頼っている
→ いつか必ず限界が来ます

⑤ 自分と、あとはボランテイアがお世話
ボランティアはいつでも辞められる
→ 人手が足りなくなる可能性があります

⑥ 高齢・持病の猫が増えている
→ 時間も医療費も増え続けます

これらはすべて、
崩壊に向かう構造です。

何匹以上が多頭飼育崩壊?

環境省の多頭飼育崩壊のガイドラインでは「何匹以上」とは定めていません。

多頭飼育崩壊とは、
多数の動物を抱え、適切に飼養管理ができなくなった状態
です。

つまり——
15匹でも50匹でも、適切に飼養管理されていれば崩壊ではありません。
一方で、5匹でも適切に管理できていなければ崩壊と言えます。

問題は数ではなく、 管理できているかどうかです。

それは、その人の経験、施設(家)の状態、都会か地方か、お手伝いさんの数など、複数の要因によって、「ふさわしい数」が異なってきます。

「ふさわしい頭数」とは

「まだいける」という感覚ではなく、

• スペース
• 人手(時間)
• お金

主としてこの3つの要素で考えます。

これを
Capacity of Care(キャパシティ、オブ、ケア)
飼育できうる頭数、
と呼んでいます。

スペース、空間からふさわしい数を見積もる

アメリカのシェルターガイドライン(ASV)では、
猫のケージスペースについて

• 1頭あたり0.75㎡未満は不適切
• 理想は1㎡以上

と示されています

これはあくまで最低限の目安であり、ケージ飼いをする時のケージのサイズです。
大部屋で複数で飼う時は別ですが、逆にストレスのない、プライベートな空間を備える必要があります。
また時間を決めてケージの外に出すなど、工夫もできます。

日本でも、動物取扱業における基準では

1匹あたり約0.5㎡程度の広さ
が目安とされてきました。
ただし、これらはあくまで「最低限」です。

環境省の飼養基準は、「最低でもこれは守りましょう」という基準です。
これを超えたら処罰の対象にもなる可能性から、低めに設定されています。
それゆえ、これを満たしていれば崩壊しない、というものではありません。

これらの最低基準から、実際の自分のスペースを測定し、だいたい何頭が限界なのかを計算してください。

世話をする時間による「ふさわしい頭数」計算法

犬も猫も、世話をするのに時間がかかります。
有償スタッフ、無償ボランティアを含めて、何人が何時間、お世話できるか、から動物数を計算します。

猫1匹に必要な時間の目安は、各ガイドラインによると、だいたい

健康な猫:約15分/日
• 病気・老齢、子猫:20〜30分/日

です。

例えば15匹いる場合——
• 健康な猫だけでも → 約225分(約4時間)
• 通院、掃除、投薬を含めると → 5〜6時間以上
になります。

さらに施設のお掃除、洗濯、物資の購入や運搬など、雑務の時間が必要ですね。
毎日、猫のためにこれだけの時間を無理なく確保できていますか?

自分および、手伝ってくれるボランティアさんの仕事時間を測り、マンパワー的に何頭くらいまでお世話できるか、計算してみましょう。

お金による「ふさわしい頭数」の計算法

会社の収支計算と同じです。

まず支出の部。

昨年の会計から、1日あたりの出費を計算します。
また、1日に平均、何頭の猫が滞在していたかも算出します。
そして、1日、1匹あたり、いくらかかるか数値を出し、把握してください。

それがまぎれもない、自分が1日に1頭に使っている金額です。

次に、収入(ご寄付など)と、使った貯金の合計を計算します。

例えば、1日1匹に、500円のお金がかかっていたとします。
すると、15匹の場合は、1日7,600円になります。

もし収入(寄付+貯金から)が年間200万円だとすると、
1日5,479円に相当します。

この場合、1日10匹程度しか養えない、となります。

支出が収入を上回れば、やがて倒産します。
支出が収入以内で収まるように、頭数を減らさなくてはなりません。

重病の猫などはクラファンで募る、こともできます。
しかし安定かつ健康な収支を保つために、現実的な金額を把握してください。
その都度のクラファン経営では、長期的に健康で安定とは言えません。

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さらなる要因ー災害時の被災

災害のとき、あなたは全頭守れますか?

ここは、ぜひ具体的に想像してください。

日本は災害大国です。地震、台風、豪雨、津波。あるいは大規模停電や断水などもあり得ますね。
あなたは、全頭を安全に、迅速に避難させることができますか。

• キャリーはいくつありますか。
• 一度に何匹運べますか?
• 一人で全部運べますか?
• 何往復すれば終わりますか?
• その間、残された猫は安全ですか?
• 避難先は確保されていますか?

多くの場合、避難所は多頭の猫の受け入れは難しいでしょう。
夜中に誰もお手伝いがいない時、大きな地震が来ても、同じことができますか?

一度には無理ならば、現実的に可能な数まで、猫の頭数を減らすべきです。

さらなる要因ー自分に何かあったとき

多頭飼育崩壊になるきっかけで最も多いのは、

飼い主、保護主の病気・死亡です。

そのとき、

• 誰が引き継ぎますか?
• 遺書はありますか
• 混乱なくスムーズに引き取ってもらえますか
• お金は残されていますか?
• 詳細な飼養の仕方を書面に残してありますか
• 過去の投薬や治療がわかる日報を書いていますか?

「2〜3匹なら」と言う人はいても
「15匹全部」はとても難しいです。

まだ準備していなければ、今日から始めてください。
15匹全頭の行先が見つからないのならば、自分の後に行く場所を確保した数まで、猫を減らしましょう。

どんなに若くても、今健康的でも、明日の自分のことは何の保障もありません。
自分の死後、猫が露頭に迷ってほしいですか?

頭数を減らすために

さて、多くの心ある保護主様が、「できれば頭数を減らしたい」と考えています。

しかし、実際に減らすのは簡単ではありません。

やることはシンプルですが、とても難しいです。

これ以上、増やさない
• 外に出していく(譲渡・移動)

例えば、
「1年で2匹減らす」
このように現実的な目標を持ってください。

それができないときは、
すでに少しバランスが崩れ始めているサインかもしれません。

さいごに

あなたのところに来た子たちは、
どの子もかけがえのない命です。
助けたいという気持ちは、
本当に尊いものです。

守れる数を超えてしまったとき、
その優しさが、自分も猫も苦しめることになります。

どうか、一人で抱え込まないでください。

誰かに頼って、ぜんぜんいいんです。

頼ることは、弱さではありません。
近くの人、自治体のセンター、家族友人。
勇気を出して相談してみてください。

何となくピリピリしていた隣の保護団体に、思い切って相談してみたら、思いのほかに協力的で、助け合って解決できた、という例を日本で見ました。

多頭飼育崩壊にならないのに必要なのは、

何匹までなら飼える、と一人で頑張るのではなく、

みんなで一緒に猫と保護主を助け合おう、という共有ではないでしょうか。
みんなゴールは同じなのですから。

References:

文責 西山ゆう子

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