犬と猫の迷子札(まいごふだ)  もしも逃げてしまった時のために

アメリカ,動物愛護,日本,獣医療・ペット

所有者不明動物

全国の自治体のセンターに持ち込まれる犬と猫は、大きく分けて2種類ある。

1つは所有者からの引き取り依頼。
何らかの理由で飼えなくなった、あるいは飼い主死亡などにより、持ち込まれるケース。

もう1つは所有者不明の動物。
ノラとしてさまよっているところを保護されたり、心ある人が保護して連れてきたり。
ノラといっても、実は元の飼い主が飼えなくなって遺棄目的で山や公園など、人気のないところに置き去りにし、その後ノラ化することもある。(自分の動物を捨てることは、動物虐待の罪になります。)
逃げてから時間が経ちボロボロの状態になっていても、未だに飼い主が必死に探している場合もあるだろう。

行政施設で所有者不明動物を引き取った場合、飼い主がいる迷子動物なのか、捨てられたのか、ノラなのかの判別はなかなか難しい。
しかし、飼い主がいる場合、1日も早くその飼い主の元に返したい。
元の飼い主を見つけて戻すことを、行政用語で飼い主への返還と言っている。

今日は返還のために大いに役立つ、「万が一自分の犬猫が逃亡してしまった時に役立つ標識」について紹介したい。
飼い主に関する情報を動物が身に着けていたら。それだkで飼い主と再会できる可能性が上がるからだ。

飼い犬、飼い猫の逃亡

American Humane という愛護団体の統計によると、毎年全米で毎年1000万頭の犬猫が家から逃げているという。近くのシェルターで保護された場合、犬は9割、猫は7割が飼い主への返還ができているそうだ。

私は気を付けているから大丈夫、うちの子はビビりだから外に出ても2メートル以上離れない、うちはマンションの3階だから絶対に大丈夫。。。という声をよく聞く。
だがいつも逃げない動物が、将来も必ず走って逃げないとは限らない。

また、自分は完璧でも、自分が不在の時に逃亡する場合もある。
家族(夫や子供など)、ペットシッター、来客、実家の両親が滞在している時に逃がすこともある。
何かのすきに動物が盗難され、その後捨てられることもある。

災害時には、家屋や窓、ドアが壊れてそこから逃げることもある。
自分だけは大丈夫という過信をまずなくそう。誰だって完璧じゃない。
何かの拍子に手からリードがするりとほどけるのだ。
首輪やハーネスがするっと取れるのだ。

そしてそのために、まず自分の動物に、「標識(ID)」をつけていてほしい。
できれば、いつも、常時、室内にいる時も。

標識の種類

言葉を話せない犬や猫が迷って放浪している時、あるいはセンターや動物病院に行きついた時、手がかりになる標識を身につけていると飼い主に知らせることができる。
代表的なのが、首輪などについているタグであろう。
そこに飼い主の電話番号や住所等が書いてあれば、連絡して飼い主とつながることができる。
近年努力義務化されたマイクロチップは、犬と猫の体内に埋め込む電子チップ。これも標識の一つである。
また最近、デジタル化が進み、トラッキングできるデバイスも出てきた。
それぞれ利点、欠点があり、どれがベストとは一概に言えない。
それぞれの利点欠点をここに紹介するので参考にしてほしい。

ネームタグ

首輪やハーネスなに直接つけておくタグ。
代表的なのはネームタグで、携帯番号や住所などが記入しておくと、発見者が直接確認し、連絡してくれる。
これは最もシンプルで、情報収取に登録機関など第三者が必要ないので、ストレートで早い。
発見者がすぐに連絡することができる。

動物が逃げた後、直後から数日以内の場合、このネームタブが一番効果的であることが分かっている。

欠点として、これは個人情報になるので、場合によっては悪用される場合もあるということだ。
なので自宅の住所など、記入を見合わせる人もいる。

また時間がたつと字が薄くなったり、読みにくくなるので定期的にチェックし、古くなったら買い替えること。

登録情報の標識

同じく首輪などにつけるタグであるが、個人情報の代わりに、登録情報を記載するのも1つの方法である。
代表的なのが自治体に登録した標識である。狂犬病予防接種と連結していることが多い。
〇〇市犬標識12345番、などと記載されている。
発見者は、これを見ただけでは誰の犬かわからない。市の担当課に問い合わせて初めて飼い主情報が判明する訳だ。
利点としては、自分の携帯番号や飼い主名など、個人情報が保護されること。
ただ第三の機関(この場合行政)が関わるので時間がかかること。夜中や週末など、タイムリーに飼い主とつながることができないこともある。
また引っ越しや携帯番号の変更など、情報がアップデートされていない場合も、飼い主に連絡できなくなる。

例えば動物病院にノラ犬が運ばれてきて、市の登録タグがついているとする。犬は負傷しており、今すぐ輸血と手術をしないと命が危ない、という状態の時、日曜日なので行政と連絡がつかず、飼い主が判明しない、という状況もありうる。

エアタグ

アップル社が販売している3センチくらいの小さな丸いボタン状のトラッキングツール。
Bluetooth信号で現在地を特定できるため、これを犬や猫につけておくと、逃げた時に居場所を特定できる。もともとは、所持品紛失の時のトラッキング用に発売されたもの。
首輪に密着して装着する付属品も多々でている。
自分のスマホと同期させるだけで、即座に居場所がわかり、しかも登録料や維持費といった面倒な費用もかからない。

私の病院に来院するアメリカ人の3-4割は、犬にエアタグをつけていると思う。そのくらい一般的に普及している。

注意しなくてはいけないのは、中にリチウム電池が入っているので、犬が飲み込まないようにしなくてはならないこと。
特に首輪にタグとしてブラブラ下げていると口に届くことがあるので、首輪にしっかりと装着する必要がある。
また何でもガジガジ噛む性格の犬、あるいは子犬にはお勧めしない。
万が一飲み込んだら、胃酸でリチウムが溶けて化学火傷になるので、直ちに動物病院で取り出してもらうことです!

マイクロチップ

日本では先の法改正により、現在すべての犬猫の飼い主に装着が努力義務となっている。

お米粒大の小さなチップで、専用の読み取り機で15桁の番号を読み取る、というシステムである。
通常犬、猫の肩甲骨の間から、首の背部の皮下に、注射針のようなもので装着する。どの動物病院でも数千円くらいで入れてもらえる。
このチップ番号を、外部の登録管理会社に、飼い主情報を登録しておかないと機能しない。
現在日本では、環境省と、日本獣医師会等複数団体(AIPO)の2組織が、主にマイクロチップの登録情報の管理を行っている。登録するのに料金も発生する。

マイクロチップは動物の体内にあるので、外からは見えず、専用の読み取り機が必要である。よって、迷い犬の発見者が飼い主情報を知ることができないし、そもそもチップが入っているかどうかさえも外からはわからない。
読み取り機のある施設―動物病院やセンターに連れていって、初めてチップを読んでもらえる。
さらに、飼い主の情報が登録会社にきちんと登録されていなければならない。チップ番号を読んだ人が登録会社に連絡してようやく飼い主情報が判明する。それから飼い主に「あなたの犬、今ここで保護していますよ」という連絡が行くことになる。
飼い主の情報がアップデートされてなく、古い電話番号だった場合も連絡がつかない。

よって、マイクロチップは、どれか1つでも不備があると、飼い主が判明できないことも多々ある。

ただし、利点はある。

米国の専門学会の統計によると、迷子になってから4週間以上という長い時間が経った後、飼い主返還につながるトップの理由が、マイクロチップからの情報なのだ。

すなわち、タグや首輪などは、放浪生活が長いと壊れたり落ちたりする可能性が高くなるが、マイクロチップは体内にあるので、紛失しない。
また、チップは半永久的に長持ちするので、5年後、10年後に飼い主に返還という例もしばしばある。

マイクロチップは、タグなどの即効性のある標識のバックアップとして、ぜひ装着することをお勧めしたい。

QRコードのタグ

これもアメリカでは、診察室に来る犬でちょくちょく見るようになった。
首輪につけているタグであるが、四角いQRコードだけのタグである。
多くの飼い主は、自分のインスタやフェイスブックのサイトのサイトと連結させている。
実際に犬が逃げるとする。
飼い主はすぐに、自分のインスタに、「今、僕の犬が逃亡しました。見つけた方はDMください!」と書いておくと、発見者が飼い主に連絡がつく、という仕組みだ。
これだと、電話番号や住所などの個人情報が守られる。
今やスマホを持っていない人はいないくらいなので、これは無料で簡単にできる、標識の1つだと思う。
皆さんもぜひお試しを。
ちなみにこれは、私のインスタ。まだの方はぜひフォローを。笑。

油性ペン


私個人の経験だが、最近の油性ペンの性能があまりにも優れているのを、子育てをして改めて気がついた次第。
そもそも、布地や皮、プラスチックなど、何にでも書けてしかも強力。
子どもの運動靴やカバン、水着運動着などに書き、何度も洗濯をしてもぜんぜん色あせない。
ぜひ、犬のハーネス、首輪に直接、自分の電話番号なりを、この油性ペンで書いてみてほしい。
お勧めは、サクラクレパスの、油性マーカー「マイネームツイン」。(しかも安価)
実際私の犬のハーネスに書き込んでるが、5年以上持続中。
(写真はサクラクレパスのHPより)

プラ板

これも子育てをした人なら親しみがあり、知らない人は全く知らないかも。
プラスチック製板。子供用のクラフトの材料。
数センチ大のプラスチックの小さな板で、百均でも売っている。
好きな形にプラ板を切り、そこにペンで絵なり電話番号なりの情報を好きなように書く。
それをオーブントースターに入れて数分熱すると、約5分の1くらいのサイズに小さく縮まる。
プラなので固く、ちょっとやそっとじゃ傷ついたり、字が消えない。
これで自分の犬、猫用のタグを作ると、かなりコンパクトでステキなタグになる。
サイズが自由に作れるので、小型犬や猫にもお勧め。
上のQRコードをこれに貼って作ってもよし。

アイロン用ネームシート

これも子供用の、特に幼稚園児の持ち物などにつけるためのワッペン。
自分で名前を書き、それを手提げ袋や服などに、アイロンで張り付けるもの。
正直、昔の感覚だとすぐに剥がれてしまうのではないかと疑っていたが、最近の製品はかなりの優れもの。
何度洗濯しようが、どんな生地であろうが、かなりぴったりと貼り付けることができる。
しかもかなり薄くて柔軟性がある。
電話番号など飼い主情報を記入して、アイロンでハーネスや布制の首輪にくっつけてみてほしい。
驚くほど長持ちしますよ。
アマゾンや、ユザワヤ、東急ハンズなどで入手できる。

携帯用ピルケース

2-3センチの長さの筒状のアルミ製の入れ物で、開け閉めできて、中に小さな物を入れることができるもの。
常用薬なら数粒入る大きさで、携帯用のキーホールダー状のもの、ネックレス型もある。

アメリカ人はこの中に、聖書や教典の文章の一部を紙に書き、小さく丸めて持ち歩く人がいる。
例えば旅行に行く時、試合に出る時、受験する時など、その状況にふさわしい一文の紙をこの中に入れて身につけて運を願う。
ちょうど、私たちが神社で買う、開運、交通安全、学業成就などのお守りを身に着けるのと似た感じかな。
そのための小さな携帯用の筒が安価で売られている。
これを犬につける人を時々見かける。
中には飼い主情報。だが、筒状にした紙には、ある程度多くのことを書くことができる。

先日、老犬の飼い主がこの筒を首輪につけていて、逃げた時のエピソードを語ってくれた。
この筒の中に小さな手紙を入れておいたので、庭から逃げた時にとても助かった、と。
「Cody は老犬です。最近痴ほうが始まり、関節炎も進みました。最近ガンコになり日中はどうしても庭で過ごしたいと言って譲りません。私たちは残り少ないCodyの生活が快適に過ごせるようにしています。でも最近、ゲートをかじって外に逃げることがあります。もしあなたがCody を見つけたら、お願いです、すぐにご連絡ください。Cody は私たちにとって、かけがえのない愛する家族です。Cody は腎臓が悪く薬を毎日飲み、特別食を食べなくてはなりません。ご理解お願いします。私の電話番号、夫の電話番号、私のメルアド、インスタDMは以下です。」
この紙を見た発見者は、すぐに飼い主に連絡をくれて、やさしいねぎらいの言葉をくれたそう。
何等かの理由で多くの情報を書きたい場合は、この筒はお勧めですね。
アマゾンなどで購入できる。

まとめ


市販のネームタグから手作りのもの、インスタQRコード、エアタグからマイクロチップまで、それぞれ紹介した。

それぞれ利点、欠点があるので、自分の犬猫の習性や体格、毎日の生活スタイルを考慮して、ぜひ2重3重に準備してほしい。

特に日本は災害大国。

いつ何があっても慌てないよう、逃げた時、離れてしまった時を想定しておいてほしい。

Preparing is preventing. 備えあれば憂いなし。

注意
リンクはご自由にお貼りください。
ブログや記事にする場合は、お知らせください。
よろしくお願いします。
西山