新型コロナウイルス流行地のロサンゼルスでは、動物病院はどのように診療しているか

新型コロナウイルス,獣医療・ペット

非常事態宣言と動物病院

ここロサンゼルスでも、Stay in Shelter 令が出て、1か月くらいになります。

現在まで、約2万人近くの感染者が確認されています。そんな中で、動物病院はどのような診療をしているか、ご紹介したいと思います。

当地では、ジムや遊戯施設などは、全部営業できなくなっています。ショッピングモールも閉まっています。レストランは、施設内の飲食が禁止で、すべて持ち帰りだけに制限されています。ハンバーガーショップも店内での飲食はできず、ドライブスルーで購入します。

営業を続けているのは、食料品のスーパーやドラッグストア―、人の病院など、Essential Business と認められた職業に限ります。動物病院も、エッセンシャルであるということで、営業を続けてもよいという許可はでました。しかし、以下のことを守らなくてはなりません。

1. 緊急性の高いケースに限ること。
2. 飼い主との間、あるいは、スタッフ間では、6フィート以上の距離をあけるというルールを守ること。
3. どうしても近づく場合は、マスクなどの防具を用いて、短時間にすること。

などです。

なぜ、緊急性の高いケースに限らなくてはならないのか

そうはいっても、持病を持っており、定期的に通院をしている動物もいます。また、診察数を下げることは、収入減にもなります。ウイルスが蔓延しないように、消毒を徹底して気を付けていれば、何も普通に診療してもよいのでは、と思うかもしれません。

<h3>理由は3つあります。</h3>

1. 自分、飼い主、スタッフを、新型コロナウイルスの感染から、極力守るため。
2. できるだけ多くの人に、Stay at home. 家にいてもらうようにするため。
3. マスクやガウンといった防具、備品、消毒液、アルコールなどの消耗品の消費を、最低限にしてもらい、これらは人間の医療現場に届けるようにするため。

そのため、出勤するスタッフの数を、極力減らすようにしました。まず院内に、離職、長期休暇希望者がいないか、確認しました。

慢性喘息などの呼吸疾患のある人、比較的高齢のスタッフは、自ら、しばらく休みたいという人がいました。また、自宅に、自分が介護している、持病のある高齢者がいるので、自分が媒介して感染させたくない、ということで、長期休暇をとる方もいました。

子どもが家でホームスクールになったので、勤務時間を短くする人、パートタイムに変わる人もいました。そうして、少ない人数で、少ない診療数をこなす、というふうに、病院の経営を変えました。

動物病院が、消毒液や備品の使用を制限すると、そのぶん、人間の病院に届きます。これらの備品や薬品は、世界的に不足しており、やがて入手できなくなります。

今、在庫を心配して、多量に買いこむことは、非常に身勝手な行為です。今は、人の命を救うためにも、動物病院での消費量を減らさなくてはならないのです。

緊急性の高い症例に限る

では、何をもって、緊急性がある、なしを決めるのでしょうか。

飼い主さんにとっては、例えば犬が1回くしゃみをしても、緊急事態と思う方もいるでしょう。それゆえ、病院の側である程度、判断しなくてはなりません。

獣医師会や、専門委員会などが、その判定基準を発行しています。それを目安に、それぞれのケースで判定しなくてはなりません。

一般に、ワクチン、定期健診、つめ切り、肛門腺しぼりといったものは、待ってもらいます。

軽い下痢、ちょっと元気がない、というような場合も、本来は念のため、来院してもらうべきでしょうが、今は電話で相談をした上で、アドバイスだけにすることが多々あります。食事をこう変えて、様子みて、続くようなら診ましょう、などです。

また、定期的な再診も少し緩和しています。

例えば、ずっと心臓の薬を服用している、初期の腎臓病で、ずっとモニターしている、などです。3か月に1度、血液検査する、エコーをする、という予定でも、非常事態宣言下であることを理解してもらい、もう1か月時期を遅らせるなど、いつもより緩和した診療体制になります。

手術も、不妊去勢手術や、デンタルは受け付けず、子宮蓄膿症や帝王切開、腹部腫瘍摘出など、緊急のものに限っています。

飼い主さんと電話やテレメディスンでよく相談し、自分や飼い主が新型コロナウイルスに感染しないための最善策であることを理解していただいています。

実際の外来の流れ

まず、基本、全部予約制になります。

飼い主さんが予約電話してきた時に、ワクチンなどの待てるケースは、後日にしてもらいます。

診察が決まった場合、飼い主さんや家族に、新型コロナウイルスに感染した人はいるか、疑いがある人がいるか、必ず確認します。いる場合は、完全防具をつけた扱いとなり、違うプロトコールになります。

飼い主さんには、車で来ていただき、可能な限り、キャリーに入れてもらいます。また、来院は、できるだけ1人が少人数に限ってもらい、車内で待機してもらいます。院内に入れず、また獣医師とも面会できません。

駐車場についたら、キャリーを車外に出し、地面にボンと置き、飼い主は車にもどってドアを閉めます。大型犬は、指定された場所にリードでしっかりつないでもらいます。

スタッフが駐車場に行き、キャリーや犬を受け取ります。キャリーのハンドル部分は消毒します。

院内で、診察、検査、治療をします。獣医師やスタッフは、車内で待機している飼い主さんと、電話で話します。

終了後は、スタッフがキャリーを車外に置き、スタッフが去った後で、車内に入れてもらいます。

会計は電話でクレジットカードで。薬は素手で触らず、カットもしないで、飼い主様に渡す。多くはキャリーケースの上に置いて渡しています。

その他の注意事項

多くの病院は、他にも細かいルールを決めています。出勤前に、それぞれ体温を測定し、出勤時に記録をすると決めたところもあります。

咳が出る、微熱が出たら、ただちに帰宅するというルールもあります。電話、タブレット、PCなどは、その日、各自、自分が使う専用のものを決めて、スタッフ間でシェアしないようにしています。

休憩時間を含めて、スタッフが6フィート以内に近づかないように配慮します。もちろん、1日中、自分専用の布マスクを着用しています。

グローブの使い捨ては無駄なので、毎回、石鹸で手を洗うというのを実施します。グローブは、直腸検査など、どうしても、という時のために節約します。院内の清掃消毒も頻繁にし、特にドアノブ、電気スイッチなどは、より頻繁に消毒します。

以上、動物病院によって、あるいはその地域によって、多少の差はあるとは思いますが、簡単ですが紹介いたしました。ご参考にしていただけたらと思います。

なお、情報は頻繁に変わっておりますので、ご注意ください。

You Tube ビデオにて、動画も作りましたので、こちらも合わせてご覧いただけたらと思います。

本当に、一人一人が、できることを、実行していくしかありません。1日も早く、新型コロナウイルスが鎮火するよう、犠牲者が一人でも減りますよう、心から願っております。