数値規制の使い方 具体化した新愛護法を有効に使うために

動物愛護,日本

数値規制が最終決定

いよいよ、数値規制の具体的な内容が最終的に決定しました。
コロナ禍での審議でもあり、長い時間がかかりました。
このために時間と努力をした各関係者の皆様、本当にご苦労様でした。
そして、パブコメ等で応援した多くの皆様にも、感謝の気持ちでいっぱいです。

飼育数制限に関しては、施行が3年先ということもあり、あのパブコメは何だったんだ!と思う気持ちはわかりますが、全体としては、大きな前進で喜ばしいことと思っています。

どんな人にとっても、同じ意味を持つ具体的な文章は、公平で感情が入る余地がありません。
ペットを繁殖させる人も、売る人も、正しい飼い方を指導する自治体も、一般の飼い主さんも、動物を保護する愛護団体も、何十年もペットを飼ってきたベテランも、学者さんも、獣医師も、一度もペットを飼ったことがない飼い主さんも、「被毛が毛玉になっていてはいけない」は、同じ解釈になります。

動物に苦痛を与えてはいけない、という漠然とした文章よりも、確実に明確です。

この法改正が、数年後に動物愛護団体のような第2種動物取扱業者になると決まりました。
そして将来的には、ペットを飼う人すべてが守らなくてはならないことの、基準になっていくでしょう。

それにしてもSNS では、この達成について、あんまり私見が出ていないように思うのですが。。みんな疲れちゃったのかな?

どうやって使うか


せっかくできた新愛護法です。
きちんと有効に使っていただかなければなりません。

今日は、具体的に、どういう活用方法があるのか、そして実際に使用する時の注意点、問題点について、私個人の意見を述べます。
法なのだから、裁判で使うだけでしょ、と思われるかもしれません。
しかし、私はもっと広く、有効活用できると考えています。
今回の数値化は、広くいろんなメリットがあると感じています。

1.訴訟、裁判で判決がしやすくなる

誰かが告発し、正式な訴訟になれば、数値化した条文は、非常に使いやすくなるでしょう。
陪審員にとっても、裁判官にとっても、条文が具体化しているために、解釈に迷うことなく、ストレートに使うことができると思われます。

2.告発をしやすくなる

条文に数値があり、具体的であるほど、違反であると証明しやすくなります。

従業員数の数、環境温度、運動時間。どれも、記録さえきちんとすれば、証拠としてあげることができます。

すなわち、違法行為が明確になり、より訴訟しやすい状態になります。

3.イエローカードを出しやすくなる

これは、主に地方自治体の関係者に活躍していただきたいことです。

例えば近所からの通報があり、実際の現場に赴いた時に、違反しているかどうか、判定しやすくなります。
その時に、「これは動物愛護法違反になります。直ちに改善してください」と指導することができます。
これをイエローカードと言います。

「現状のままだと違法です。改善しなくてはいけません。改善しないで、このままならば、次回はありませんよ」、という警告です。

この警告は、犯罪予防では、非常に有効です。訴訟する時のプロセスの煩雑さもなく、また訴訟費用などもかかりません。

今まで、例えば自治体が「不衛生だ」と警告しても、「不衛生であると証明して」と言われれば、訴訟しか道はありませんでした。
数値化で具体化したことにより、違法行為が明確になり、イエローカードも出しやすくなりました。
そして、訴訟や営業停止等を避けるために、現場は現状の改善を行うことになります。

イエローカードは、動物虐待の予防と現状の改善に、煩雑な訴訟プロセスを経ないで解決できる有効な手段の一つなのです。

4.啓蒙、啓発活動がしやすくなる


さらに、生産者だけではなく、動物愛護団体や、一般市民に対しての啓蒙、啓発が行いやすくなります。
どういう状態が動物虐待とみなされるのか、というのが伝わりやすくなります。

例えば、動物に「飢えがない」「苦痛がない」ように飼いましょう、と言われても、ピンとこない人がいるかもしれません。

でも毛玉がない、つめが伸びすぎていない、というのは明確なメッセージです。

外にずっとつないで散歩させずに犬を飼っている人にも、「あなたの犬も運動させるべき」と強く啓発しやすくなります。
一つの具体的な条文は、業者だけではなく、多くの日本のペットの啓発に、参考として使用することができます。

数値化した動物愛護法を有効利用するのは誰?

では、どういう人たちが、この数値化した条文を、うまく利用することができるでしょうか。

裁判官、陪審員、弁護士
はい、当然、裁判になれば、裁判の関係者が、数値化した条文を有効に利用することができるでしょう。

地方自治体の職員
住民等の苦情などにより、現場を視察する自治体やセンターの職員は、イエローカードを出しやすくなり、また、より強いパワーで現状改善を要求することができます。

警察官
動物虐待の疑いがある場合、警察に通報することがあります。この場合、現場に赴いた警察官も、虐待の証拠や現場検証の一つとして、数値化した条文を参考にします。具体化は現場に急行する警察官のヘルプにもなります。

動物愛護の啓蒙啓発をする人、団体
各動物愛護団体、獣医師会、獣医師、動物愛護推進員、ボランテイア、など、動物愛護に感心があり、動物の福祉の向上を求めている人は、皆、今回の数値化の条文を参考にし、ペットの飼育と福祉の向上の啓蒙啓発に、貢献できます。

メデイア関係
動物虐待や、多頭飼育崩壊などを記事にて発信するメデイアにとっても、動物愛護法に違反しているとみなされる、という情報を発信しやすくなるでしょう。

一般の人
今は、誰もが、SNSやブログ、YouTubeやTikTok など、様々なツールで発信する時代です。誰もが、数値化を知ることで、これって動物虐待だよね、っていう意見を発言することができます。

さらなる問題点

動物愛護、動物の福祉は、数値化が決まった今、すべて解決できた訳ではありません。。
今後も、現場では多くの問題点が出てくることでしょう。

現場の現状を把握するのに、立ち入り調査がどこまで実行できるのか。

業者が提出する台帳に不正があった場合、どうやって判明するのか。

架空の従業員、調査の時だけのにわかスタッフでごまかさないのか。

日本では、警察官や行政職員が現場調査の時に、緊急保護が必要な瀕死の動物がいる場合でも、飼い主権を拒否して、現場から救済し、保護することができません。
動物の所有者の合意なしに、施設内を捜査するには、煩雑な手続きが必要になります。

これらの諸問題を、これから早急に改善してこそ、本当に動物たちにとってのウエルフェアが実現できると思っています。

先は長いです。
しかし、今回の数値化は、確実な前進、一歩です。
今後も少しづつ、決して止まらず、少しづつ進んでゆけたらと願っております。
皆さん今年も、動物たちのためにがんばりましょうね。

動物愛護,日本

Posted by Dr. Yuko Nishiyama