ペットと飛行機に乗る時 機内持ち込みと荷物お預けの違いについて
ペットを連れてフライト
旅行やお引越しで、ペットを連れて飛行機に乗る時があるかもしれません。
また、保護動物の場合、遠方の人に譲渡するためにペットを空輸している愛護団体もあります。
今回、ペットを機内に同伴して搭乗する場合と、手荷物として荷物室に預ける場合の違いについて、その違いとそれぞれの利点、欠点をまとめてみます。
ことばについて
ニュースやSNSを見ると、言葉の使い方が一定していません。
ここでは、以下のように定義します。
機内持ち込み ペットを連れて飛行機の機内に一緒に搭乗し、フライト中ずっとペットと一緒にいること。
手荷物としてお預け ペットを荷物カウンターで手荷物として預け、自分は客席、ペットは貨物室で移動し、到着地でペットを引き取ること。
貨物 自分は飛行機に搭乗せず、ペットだけ貨物として預け、到着地で他の人がペットを引き取ること。
ケージ 通常は金属製の網または格子状の四角い入れ物。
キャリーケース 一般に皮あるいは布製のショルダーバッグで、ジッパーなどで開け閉めする。通気用の網状の部分がついている。機内持ち込み用に「エアライン認証」されたものも発売されている。
クレート 通常プラスチックでできているボックス型の入れ物。
網状のドアが前面について、そこを開け閉めして動物を入れる。ボックスの上に手で持つためのベルトがついている。
ペット 愛玩動物として飼育されているもので、ここでは犬と猫に限って話をします。
使役動物、セラピー動物 盲導犬のような、身体障がい者が必要としている動物は、ペットとは違うカテゴリーになり、航空会社によって別の取り扱い規定があります。ここではこれらは除外し、愛玩動物のペットのお話になります。
エモーショナルサポート動物 米国では精神科医による認定があります。精神的に不安定な人が、精神科医の処方により、飼っているペットを「エモーショナルサポート動物」に認定できます。動物と離れると精神的に支障をきたすという理由で、機内のペット持ち込みなどが優遇されます。
機内持ち込みの利点
・ペットと一緒にいれるので、動物も人も安心感がある。
・ペットに異変があった場合にすぐに気が付いてあげられる。例えば排便排尿した場合など、すぐに対処できます。医療処置なども簡単なものは、迅速に対応できる。
・荷物として預ける場合は、搭乗降乗の際に一時的に外気下を移動するので、高温、低温下に短時間置かれるが、機内持ち込みだと環境温度は安定している。
機内持ち込みの欠点
・エアライン認定のキャリーバッグを購入しなくてはならない。
・体重やサイズの制限があるため、猫や小型犬に限る。
・座席の下に置かなくてはならない。(例えば通路側に着席した場合、緊急避難時に窓側の人が出らることができるようにするため)
・動物は狭い空間(キャリーの中)に長時間待機しなくてはならない。
・緊急避難時には、動物を連れて一緒に避難できない。人間の避難が優先となる。
・酸素マスクが必要な時に、犬猫に酸素補給できない。させようとしてもマスクがフィットしない。
・キャリーバッグのジッパーなどの不具合で、バッグから出て逃走する事故が起こることがある。(ケージやクレートのドアは、間違って開くという事故が起こりずらい)
・動物が吠えたり叫んだりすると、他の乗客の迷惑になる。
・動物アレルギーの他の乗客がいたら被害を与えてしまう。
・動物嫌い、動物が怖いという乗客がいたら、迷惑になる。
荷物としてお預けする時の利点
・中型、大型犬が預けられる。
・吠えても他人に迷惑にならない。
・機内持ち込みよりも広い空間がある。立つ、回って反対側を向くといった基本動作ができる。
・長時間のフライトでは、飲水が許されることがある。(飲水ボトルの着用が許可)
荷物としてお預けする時の欠点
・飼い主と離れなくてはならない。
・搭乗降乗の際に一時的に外気下を移動するので、高温、低温下に短時間置かれる。夏の猛暑時の熱中症、冬の低体温症の危険がある。
・緊急時には、避難が後回しになる。(人命優先)
・エンジン等の音がおそらく、客室よりも大きい(各エアラインに確認ください)
・貨物室は空調が調整されているが、不備不具合があった場合はすぐに修復できないこともある。(空調故障で動物が死亡した事例が過去にあります)
・飛行中は貨物室の照明は落とされ、暗くなる。(各エアラインにご確認ください)
・動物に異変が起こっても、到着地に着くまで判明できない、対処できない。
・複数の動物が同じ貨物室に乗る。吠え続ける犬の横にシャイな猫が載せられる場合もありうる。
飛行機以外のオプション
さて、機内持ち込みも、荷物としてお預けも、それぞれ利点欠点があります。
ご自分の犬や猫の性格やサイズ、飛行距離、季節などを考慮する必要があります。
どちらがよい、悪いと簡単には決められません。
さらに、飛行機以外のオプションも考慮してはいかがでしょうか。
エアラインによっては、フレンチブルやパグとしった短頭種は載せない、あるいは時期の制限をしています。
アメリカの場合、国内線は機内持ち込みは頭数制限の上認めているエアラインが多いですが、頭数やブリード、体重サイズの制限はあります。
またあまりに吠えてうるさいので、途中で最後尾に座席を移動させられた、という例も聞きました。
飛行場では慣れない環境、多く雑踏と待ち時間があり、さらに長時間排尿排便ができません。
フライト中は、特に機内持ち込みでは狭いバッグの中で長時間待機し、慣れない飛行機の音などで動物にストレスがかかります。
気圧の変化、少し薄い酸素濃度なども、調節が難しい動物もいます。
空ではなく陸路での移動も考慮してください。
飛行機事故は滅多に起きないものの、何かあった時に少なくとも、自家用車の場合は同伴して逃げることができます。
地震などの災害時にも、自動車だと迅速に予定変更できますね。
世の中の動物嫌いな人への配慮を
動物を見ただけで怖くて冷や汗が出る人もいれば、クンクン、にゃーにゃーという声があるとリラックスできない、という人も世の中にいます。
飛行機は、狭い空間を一定時間、みんなそれぞれ少しガマンしながら、なるべく他の乗客に迷惑をかけないようにして過ごしています。
子どもの声もそうですよね。嫌いな人は嫌いでしょうけど、文句は言いません。
ここは大人の社会なので、何も文句は言わないけれど、誰がどうガマンしているのかはわかりません。
文句が出ないからみんな犬好きだと勘違いせず、決められたルールを守り、人に迷惑をかけないようにするマナーをいつも持ち合わせていたいです。
大丈夫だから、この子おとなしいから、と言ってキャリーから出す、抱き上げてよしよしするなど、他人が見たら恐怖だったり、迷惑な行為のこともあります。
責任のある飼い主として、迷惑行為を認識してほしいです。
鎮静剤の利用について
フライト中、あるいは陸路の移動中に、少しでもリラックスさせたい、眠くなってほしいと言って動物用の鎮静剤の処方を希望する人がいます。
これに関して、一般論として獣医師は、薬物の利用を奨励していません。
鎮静剤の効果は個体差があり、移動中に効きすぎて血圧が下がったり、体温調整が難しくなったりして、死亡するケースがまれにあります。
興奮してケージなどを破壊する恐れがある、あるいは動物がケガをする危険がある場合(ケージをかじって歯を折るなど)は、使用することがあります。
その動物の年齢、健康状態や性格によりますし、複数のタイプ、強さの鎮静薬があります。
詳しくは獣医師と相談してください。
その旅行は本当に必要ですか
お引越しではなく、一定期間どこかに行き、また自宅に戻る場合は、動物を連れていかないというオプションは考慮しましたか。
「以前近くの動物病院に預けたら、何も食べずにげっそり痩せたので」
「この子私が作る手作り食しか食べてくれないので」という声も聞きます。
今はペットシッターで家に来てくれるサービスもあるし、何よりそんなふうに甘やかされているペットは、いざ災害で避難所生活になったり、自分や家族に万が一のことがあって死亡した場合に動物自身が一番苦労します。
ペットホテルも利用が難しいのならば、旅そのものを考えなおし、近い場所の日帰りにするなど、過ごし方をもう一度再考しましょう。
また、統計によると、移動中や旅行中に誤って犬や猫を逃がしてしまう、という事故が通常より多く発生します。パニックになった動物は思わず、通常とは異なる行動をとります。
旅行中は必ずネームタグを着用し、ハーネスやリードをしっかりと装着して、逃亡防止を行ってください。
ペットと一緒に生活できる、ということは、それだけで毎日が楽しくなり、人と動物の心の絆が生まれて、人生をより楽しむことができるはずです。
大切な動物を一生責任もって守るために。
ルールとマナーを守って、責任を持って旅行計画を立ててくださいね。
過去に飛行機事故またはフライトや移動中に、命を落とした多くの動物たちに心からお悔やみ申し上げます。
フライトや旅行中に不幸にしてペットを失ってしまった多くの方に、心傷が癒えますよう願っております。
注 このブログの内容な個人の一般論の意見です。ご自分のペットと旅行やフライトについては、担当の獣医師によく相談してください。また実際のご旅行、フライトに関しては、エアラインによって異なるので、個別にご確認ください。
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