被災地に残されたペットの救済 被災地から学ぶこと
この度の豪雨により、被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。
新型ウイルス伝染病、異常気象、暴風雨、地震。。。
私たちは、いつの時代も、自然と闘いながら、自分を、社会を、人類を守らなくてはいけないのだなー、と感じます。
そんな中で、やはり私たちは、どんな時もペットを守らなくてはならない、ペットを守る義務があると痛感します。
熊本の球磨村での犬・猫、そして住民の救済記事につて
ところで気になる記事を目にしたので、今日はこれに関する個人的な感想を述べたいと思います。
避難した後に、自宅に残された犬、猫を助けてほしい、という要請が、ARROWSに入り、ヘリコプターが出動し、動物は無事に保護になったとのこと。
その途中で、孤立状態になっていた住民17人の移動も手助けをした、という記事である。
残されたペットが、無事に保護されて、避難所の飼い主と再会できたことは、すばらしいし、よかった、と安堵するニュースである。
しかし、この方は、ジャーナリスト。
新聞記事の報道に関して、するどい指摘をしている。
以下、中東氏のコメント。
球磨村の担当者は「結果的に早期救助につながってよかった。とはいえ今回は偶然のケース。今後同様のことがあった場合は、状況に応じて判断する」としている。素直に担当者が喜んだコメントを載せないのは何故?
西日本新聞はなぜ17人の置かれた状況を説明しない?
何故、自衛隊は17人を発見できなかったのか?
素朴な疑問がいくつか。。。。
被災現場の救出で大事な要素
私は、California Veterinary Medical Reserve Corps (CAVMRC) カリフォルニア獣医師会・獣医療予備隊に所属し、災害時には、現場で動物の救急処置や救出をお手伝いするメンバーになっています。
獣医師会の、ボランテイア活動の1つです。
臨床獣医師であれば、誰でも自由意志で参加できるのですが、そのために、必要な知識を学び、トレーニングを受けなくてはなりません。
これが、すごく大変でした。
なかなかタイミングが合わず、実際の災害時に出向いたことはないのですが、長時間のセミナーやトレーニングでは、たくさんのことを学びました。
実際に、災害が起きて、救出作業をする時に、考慮しなくてはいけないポイントは3つ。
1.総監督の指示が絶対
2.現地の人員ー行政、警察、自衛隊、プロ、関係者、被災者、そしてボランテイアのチームワーク
3.トリアージュ
この3つがなくては、正しく安全な救出活動はできません。
現場をまとめる人
これは、一人の個人ではなく、いち組織として、許可を出したり、指示を出したりする人の集まりです。
また、この指示監督をする人の中にも、大きな権限や決定をする人から、中間の立場の人、現場で実際に、指導をする人まで、様々なレベルがあります。
全員が、必ず現地に滞在しているとは限りません。
しかし、被災した住民やペット、さらに現場の人たちの安全を第一に、混乱なく作業が進むように、大変重要な判断を任されています。
この総司令、総監督の方針、命令によって、現場は混乱なく、安全に作業が進みます。
よって、現場では、誰一人として、自分の判断で、自分の勝手な行動をすることを、控えなくてはいけません。
実際に現場で作業をする人
救出作業をする人、被害を最小限にするために、予防処置をする人、ライフラインの道を整備する人、医療関係者、輸送関係者から、他にもたくさんの専門家が必要になります。
行政関係から警察、自衛隊、気象専門家、医療関係者、土木関係者から、民間のボランテイアまで、多くの人が関わることになります。
皆さん想像される通り、これらの人たちが、一斉に、現場に行くことはできません。
今どこで、どういうタイプの仕事が緊急に必要で、そのため、どの専門家が、どういうタイプの仕事ができる人が、どこに何人必要、というのを把握しなくてはなりません。
現場は混乱しているので、正確な情報もなかなかスムーズに得られないこともあるでしょう。
しかし、総監督の指導があってこそ、それぞれの部隊が、安全に作業ができるのです。
そして、ここでも、第一線の現場にいても、自分の判断や意思で、自分の行動をすることは許されません。
必ず、1のまとめ役の司令官の意図であることを確認してから、行動をしないといけません。
トリアージュ
もともと、トリアージュは、医療用語でした。
一度に複数の患者を治療しなくてはいけない時に、どう優先順位をつけるか、という概念を、科学的に判定するのがトリアージュでした。
しかし、広義には、このような被災現場での、優先順位を決める時にも用いられています。
被災地の中でも、今、どこを優先的に出向して作業をするべきなのか。
今の天候、今後予想される天候を知ることも必要かもしれません。
例えば取り残されている被災者が、どのくらいの期間、どういう状態で待機しているのか。。
腰まで浸水して、溺れかけている住民が、助けを求めているのか。
安全な室内に、水食糧がある状態で、待機しながら助けを求めているのか。
ご高齢の方なのか。病院施設がヘルプを求めているのか。。
あと数時間すれば、暴雨がおさまるという予報があるのかないのか。
もちろん、一人では決められない大切なことです。しかし、総司令官の指導組織は、その判断と指導を行う重要な任務があります。
今回の救出劇
今回の救出に関して、私は実際の詳細、事実は知りませんし、ニュースを読んだだけです。
そして、無事に犬と猫が救われ、孤立住民も、安全に避難所に移動できた訳ですから、それに異論はなく、素直に喜ばしいことと感じます。
ただ、ジャーナリストの目からすると、今回の行動は、おそらく、何かのシステムの不協和があったと感じられたのだと思います。
実際、氏の最後の、別のケースの動画では、今にも溺れそうな浸水状態のボートから、人が猫と一緒に、ロープでヘリコプターから救助されています。
こういう状態が、一番優先順位が高い救済なのでしょう。
ともすると、犬猫だからといって、後回しにしないで、という感情論になりがちですが、被災地における3つのポイントをしっかりと学んだ上で、自分だけの行動に出ないよう、チームで動くのが、最も大切なことです。
おそらく、今後、日本でもアメリカでも、世界的に、災害時の救済時に、人々が学んで行くべき事はたくさんあります。
いち個人が、「自分の自宅のペットを助けて」と、依頼が入った。
ただ、今、行ける人がいる、ヘリコプターがある、飛べる人がいる、だから行く、ではないのです。
現在の他の状況、天候、関わっている人たちの人数や状態を把握している、総指導官のところへ、いったんは情報が収集され、そして、いつ、どういう形で、そのペットを助けるべきか。。。迅速に、かつ安全に、そして平等に、行わわれなくてはなりません。
そのために、有事の時の準備訓練に始まり、警察や自衛隊、行政を交えた多組織で、コラボで潤滑に活動する練習も必要かと思います。
被災から学ぶ
先の東北の震災津波被害の時に、私たちは、放射線地域に残されたペットたちの救済に関して、ある団体は自らの意思で保護し、ある飼い主はそのために、離れてしまったという苦い経験もしました。
あれから、飼い主権や、ボランテイア活動や不妊去勢手術の必要性も、皆で話し合って、考えをまとめてきました。
マイクロチップや、同伴避難、同行避難の重要性も、学びました。
そして、これからも、私たちは、さらに、学ぶことがたくさんあります。
総司令官を中心に、現場でチームワークとリスペクト。
一人でも多く、1匹でも多くの命が、安全に救われるために。。。
以上は、私個人の、一般論としての意見であり、今回の救出に関与した個人や団体を中傷非難する意図はありません。ご理解いただけたらと思います。
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