新型コロナウイルスに感染した人が住んでいる住居に入る時

動物愛護,新型コロナウイルス

新型コロナウイルスに感染した人が住んでいる住居に入ることになった!

犬、猫といったペットを飼育されている飼い主が、あいにく、新型コロナウイルスに感染してしまうことがあると思います。

例えば、飼い主が入院している間、動物のお世話をするために、住居に入ることは、どうなのか。どこまで安全なのか。具体的には、どのような防具を、どこまで着用するべきなのか。今日はそのお話をします。

これは、飼い主様が、あいにく新型コロナに感染し、その家に犬、猫といった生きたペットがいる、という場合のお話です。

ペットなどの生物がいない場合に、その家に入ることについては、厚生省や保健所などの指示に従ってください。

ここでは、アメリカのCDC(米国疾病予防管理センター)、AVMA (米国獣医師会)、LA County Public health (ロサンゼルス郡公衆衛生局)など、複数の米国の公的機関が発表している情報をもとに、さらに、獣医師としての私の意見を加えて、まとめてみました。

あくまでも、アメリカを中心とした情報です。日本に住まわれている皆さんが、実際に決断をする時は、管轄の保健所、あるいは厚生省や、地方獣医師会にご相談いただくよう、お願いいたします。

ペットを飼っている飼い主が、新型コロナに感染した場合。なぜ、ペットがいるその家に入るのを、気を付けなくてはならないのか。

新型コロナウイルスは、基本、人から人へ伝染するものです。よって、感染予防のためには、感染者との接触を避け、どうしても接触しなくてはならない時は、感染予防の防具を着装します。

新型コロナウイルスは、感染した人間が去った後も、環境中に残存します。いくつかの報告が出ていますが、空気中に3時間くらい、ダンボールの表面は24時間、プラスチックやステンレスには2-3日、残存していると報告されています。

しかし、これは、あくまでも、生きた犬や猫がいない環境のことです。今までのいくつかの報告や研究によると、新型コロナウイルスは、犬や猫の鼻や気道の中で生存することが分かっています。

おそらく、感染した飼い主と、濃厚接触することにより、犬や猫に、ウイルスがうつると想像されます。しかし、実際にどのくらいの割合で、人からペットにウイルスがうつるのか。まだ判明していません。

また、犬よりも猫のほうが、感染しやすいという報告も出ています。いずれにしても、ほとんどの犬、猫は、飼い主からウイルスをもらっても、ほとんどが無症状であると考えられています。犬、猫が、新型コロナウイルスに感染して死亡した例は、今まで報告されていません。

そして、犬や猫の鼻にうつったコロナウイルスが、新たに他の人に感染させるという事実は、まだ確認されていません。

しかし、ペットの鼻、気道にウイルスが、一定時間いる以上、そこから人に感染することもありうるだろう、と懸念しています。そして、その可能性もあるということで、万全の予防対策をしましょう、という考えです。

以上のことより、新型コロナに感染した飼い主さんと接触したペットがいる住居に、何等かの理由で入らなくてはならない場合は、自分が感染しないよう、ペットの取り扱いを十分に気を付けなくてはなりません。

できるだけ、感染した人の家の中に入らない

例えば、以下のような場合があるかと思います。

新型コロナに感染した飼い主が、ペットを愛護団体に手放すことになり、愛護団体の人が家まで引き取りに来た、という場合。

飼い主が、明日から入院するので、今日、他の場所にペットを移動させるため、という場合。

あるいは、自宅療養中の飼い主のペットが、具合悪くなり、獣医師のところに連れていかなくてはならなくなり、誰かに受診の代行を依頼する場合。

飼い主さんが療養している中犬の散歩の代行などを手伝いにやってきた、など。このような場合などでは、感染していない健康な人が、感染した方の家に行に行き、ペットと接触することになるでしょう。

この場合大切なのは、まず、可能な限り、感染した飼い主様とは、直接会わないよにすることです。

そして、可能な限り、家の中に入らないようにします。すなわち、飼い主に、ペットをキャリーなどに入れて、玄関の外に出してもらい、ご自分は家の中に戻ってもらいます。

そして、アルコールや消毒液などで、キャリーの外側やハンドル部分を消毒します。
もし、動物が健康で、呼吸器、胃腸の症状がない場合は、マスクと使い捨てグローブを使用することが奨励されています。

動物に症状がある場合(呼吸器症状、胃腸症状など)、マスク、使い捨てグローブ、ガウン、そして、フェイスシールドか、ゴーグルを着用するべきと言われています。
防具は、動物を家の中に戻すなり、他の施設に届けるまで、着用するべきです。

家の中に入らなくてはならない場合。新型コロナに感染した飼い主が、家にいる場合

まず何よりも、可能な限り、感染された飼い主が、ご自分でペットを世話をするべきです。

未感染の方は、可能な限り、家の中には入るべきではありません。しかし、どうしても必要な場合は、飼い主に、個室に待機してもらい、直接会わないようにします。
また、感染した人と同居している、無症状の家族や世話人がいる場合も、同様に、直接面会をしません。

ペットは、できるだけ接触を避け、どうしても触れる場合も、なるべく短時間で、任務を終わらせるようにします。

撫でたり、遊んだり、ハグをしたりもいけません。この場合の防具ですが、家の中に入る前に、マスク、グローブ、ガウン、フェイスシールドを着用します。

そして、家の外に出たら、これらの防具を正しく外し、所定の袋に入れます。(防具の正しい装着、外し方、しまい方は別に説明します)。

可能であれば、ただちにせっけんで手をよく洗います。ない場合は、手をアルコール消毒します。また、家の中に入って動物の世話をしたこの方は、防具を外した後も、しばらくは他の動物と接触するべきではありません。

例えば、ペットシッターのお仕事をされている方など、そのまま次のペットを訪問するべきではありません。

家の中に入る場合。飼い主がいない場合

例えば、飼い主が入院している間、家で一人でお留守番をしているペットがいて、そのお世話をするために家に入る、という場合があるかと思います。この場合も、飼い主がいる家に入る場合と同様の扱いになります。

すなわち、マスク、グローブ、ガウン、フェイスシールドかゴーグルを外で着用します。家に中に入り、短時間、最低限の接触で、動物のお世話をします。

外に出たら、これらの防具を外し、正しくしまい、手洗いかアルコール消毒をします。もちろん、その後は、他の動物との接触、動物のいる施設へ入らないようにします。

動物を他の施設に移動させる場合の時

これに関しては、こちらの動画にて説明しておりますので、ご参考にしてください。
YouTube のリンク先から、ご覧いただけます。

【最新版】 新型コロナ感染者と接触したペットの取り扱い (改正1) | 2020年4月3日作成。 西山ゆう子(米国獣医師)

マスクやガウンなどの備品が不足し、入手できなくなっております。今は、人の病院に、これらの備品を優先的に届けるべきで、また、備品不足も長期的に続くと予想されています。

しかし、正しい防具を使用し、きちんと着用し、安全に脱衣することは、すなわち自分の感染を予防することで、命にもつながる大切なことです。

もし、防具がない場合に、このような引き取りやシッターの依頼をされた場合は、よく考えてから引き受けるべきだと感じます。

どうか参考にしていただけたらと思います。また、この方法で行ったからといって、必ず予防ができる訳ではありません。ご理解いただけたらと思います

どうか皆様、Stay Safe!