流されない勇気

アメリカ,人生・生活,動物愛護

黒人差別の法律

1955年、アメリカには「ジム・クロウ法」という法律が存在した。

黒人に一般の公共施設の資料を禁止、制限する法律であった。
当時アメリカでは、公共のバスには黒人席と白人席が設けられ、前のほうは白人が、後ろのほうは黒人が座るように指定されていたそうだ。
これはりっぱな法律で、これに違反をすると逮捕された。
人種によって分けられたバスの座席であるが、境界線は流動的だったそうだ。
黒人と白人の座席は、通常は真ん中あたりで仕切られていたが、乗車する白人が増えてきたら境界線が後方に動き、より多くの白人が座れるようにしたという。
混んでくると黒人はより後ろの席に移動させられ、あるいは席を立つことを強要されていた。

バスの席を立たずに世の中を変えた女性

1955年12月。当時42歳のローザ・パークス(黒人)は、ごく普通の既婚女性で、生活のためにデパートに努める主婦であった。

その日ローザは、いつものように仕事を終えてバスで帰宅する途中であった。
黒人席の一番前に彼女は座っていた。
やがてバスは混んできて、白人が多く乗車してきた。
バスの運転手はローザに向かって言った。
「その席を立ちなさい。そして後ろに移動しなさい」。
しかし、ローザは立たなかった。
いいえ、私は白人のために立ちません。白人のために席は譲りません。
彼女はそう思い、かたくなに立つことを拒否し、呼ぼれた警察によって逮捕されることになる。
ちなみに、彼女は市民運動家でも思想家でもない、普通の主婦であり、その当時は有名でも何でもなかった。

ボイコット運動

彼女の勇気あるこの行動が共感を呼び、ジム・クロウ法に反対する全米の黒人たちがその後、次々と公共施設の使用をボイコットし、全米に広がった。
そしてこのボイコット運動がきっかけで、法改正に発展し、その後連邦政府はジム・クロウ法は人権に違反しているとし、1964年、人種差別を禁止する公民権法律が成立した。

誰もがおかしいと思っていることを

ローザはその後、黒人の人種差別に対する市民運動に関わるようになるが、バスの座席を立たない、という行為をした時は、無名の普通の主婦であった。
1人の名もない普通の主婦が、仕事帰りのバスの中で行ったこと。
当時全米の黒人たちが普段から直面していた、不公平、不満、不服。
誰も反対する勇気を持てなかった時に、ローザは強い信念でそれを行動に移したのだった。
ローザ・パークスの行ったこの行為は、血を流すことなく、死者負傷者を出すことなく行った市民運動として、歴史的に高く評価されている。

あなたの職場にパワハラやセクハラはないか?

私がなぜ、ローザ・パークスのことをここで紹介したかというと、今でも、おそらく世界中の多くの国で存在している女性差別や権力社会の不公平をもう一度考えてほしいと思ったからだ。
おそらく、日本もアメリカも、時代とともに改善はしているだろう。
だがやはり、ある。
大小様々な不公平があるのが現実だ

罵倒される、叱る、屈辱するといった言葉の暴力。
蹴る、叩くといった肉体的暴力。
女性も女性も、触られる、あるいは卑猥な言葉を言われる。
上司という権力と引き換えに、あなたに不当な労働を強制する。
発言力を与えない。
何かー例えば保護動物のためーという名目で、それを道具として使いながらあなたをいじめる。
あなたの嫌がることをわざとする。
あなたがいじめられていることを知りながら、何の改善策もとらない。
きっときっと、他にもたくさんいろんな「暴力」があるはず。

動物病院の場合

先輩や院長先生に自分の意見を伝えられるか?
伝えたら、それに対してきちんと対応、回答してくれるか?
他の一部の従業員だけ優遇されていないか?
サービス残業、超過労働手当なし。
誰もやりたくない地味な仕事を、うまい言い訳で逃げている人がいながら、院長はそれを容認してないか? 

動物愛護団体の場合

ボランテイア・ハラスメント?
これ以上、動物を増やすべきじゃないのに、また崩壊現場からどんどん動物を連れてくる。
ちゃんとお世話できていない保護動物がたくさんいる。
ちゃんと治療できていない病気の子がいる。
ちゃんと人と接触し、遊び、散歩できていない子がいる。
いい譲渡希望者がいるのに、出さずにしぶる代表。
あなたをいじめる古株ボラがいる?
寄付金の使い方があやしい?
あなたの意見をどこまで聞いてもらえている。
ボランテイアでも、労働を提供する以上、組織のチームの重要な一員のはず。

解決策を

私は、単にボイコット運動を進めている訳ではない。
ただ何か違うな、これは問題だ、これってパワハラ、セクハラ?と思った時に、大切なのは声に出して言うこと。
拒否すること。

行動に移すしてほしい。
難しかったら、誰かにヘルプを求めよう。
「違うかな」と感じたら、それを上司に伝えよう。

小さな一歩かもしれないが、それが結果的に動物を救い、あなた自身を救い、
そして未来の獣医界を、未来の保護動物界を、救うことになるはずだ。

3月8日は国際女性の日。
3月は女性の成功と発展を祝う月だそうだ。
過去に偉業を成し遂げた歴史に残る女性たちの、多くは暴力でははく、態度で世の中を変えた、勇気ある行動に敬意を表する。

そして今を生きるあなたたちひとりひとり、誰もが勇気あるヒーローになってほしい。

アメリカ,人生・生活,動物愛護

Posted by Dr. Yuko Nishiyama