帝王切開手術は、獣医師だけが行えると法律に明記。今までは獣医師以外の人もやっていたなら、これで終わりではない

動物愛護,獣医療・ペット

数値基準がまとまりました

動愛法の「数値基準」の制定も、いよいよ終盤になりました。
動物の適正な飼養管理方法に関する検討会が、最終的に方針をまとめ、つい先日「適正な飼養管理の基準の具体化について」を発表しました。

詳細は、メデイアやSNSなどで、とりあげられているので、ここでは割愛します。
個人的には、ここまで思い切った、具体的な数値を出したことを、大きく評価したいと思います。
もちろん、動物愛護活動家、動物繁殖業の方、一般市民、そして今後、法を実際に実用化する地方自治体の方、すべての人に満足のいく法改正、数値基準というのは、簡単に達成できません。
それゆえ、もう少しこうしてほしかたった、これも入れてほしかった、これでもまだまだ不十分だ、という感想を持つ方もいるかもしれません。
しかし、大きな第一歩であることは間違いありません。
小泉環境大臣や牧原衆議院議員をはじめとする、大変な努力をされてまとめてくださった各関係議員、また積極的な発言をして、世間に重要性を喚起された浅田美代子さんや杉本彩さん他の、動物愛護活動の方および諸団体、また太田匡彦記者のようなメデイア関係者らが、一同にまとまって努力をし、団結した結果であると感じています。

繁殖回数と帝王切開手術の回数

今回の数値規制では、犬の生涯出産回数は6回までとなりました。
悲願であった、帝王切開の回数に関しては、今回は見送られることになりました。
犬、猫が生涯、帝王切開による出産は何回までならよい、という制限は入りませんでした。
「適正な飼養管理の基準の具体化について」によると、今後は以下のようになります。

帝王切開を行う場合にあっては、獣医師に行わせるとともに、実施した獣医師による出生証明書と母体の状態に関する診断書(次回の繁殖 に対する指導・助言)の交付を受けることを義務付ける。

すなわち、帝王切開手術は、必ず獣医師が行わなくてはならなくなる、ということ。
ということは、獣医師以外が、今まで行っていた、あるいは、行っていた人がいる、ということでしょうか?

非獣医師が行う帝王切開

これに関して、今まで「うわさ」は聞いたことがありました。
実際には、私は、非獣医師が帝王切開をするのを見たこともなければ、直接、繁殖業者から聞いたこともありませんでした。
今回の数値規制の具体化において、で帝王切開に関する相談を、複数の関係者から取材を受けました。その時、残念ながら、今でも一部で行われている、と複数の方証言するのを聞きました。だからこそ今回、法の中で、獣医師以外は帝王切開をしてはいけないと、あえて明記されることになった、とも言われました。

真偽はわかりません。

本当に今でも、繁殖業者が、非獣医師によって帝王切開手術を行うことがあるのならば、これは本当に恐ろしいことです。
はたして、「今後は法律で禁止になるので、これからは安心」と考えてよいのでしょうか?

非獣医師の帝王切開は何が問題なのか

非獣医師が実際に、帝王切開手術を行っているとしたら。
そもそも、今まで法律に全く記載がなかった訳ではありません。
帝王切開を含めて、動物に手術を施行するのが認められているのは、もともと獣医師のみです。
しかし、今後同愛法に明記されることで、今後完全に、問題解決されるとは思えません。
なぜなら、いくら法で具体的に禁止されたとしても、需要と技術と、物品の流通と、経済的な利点がすでにある限り、影で継続的に行われる可能性があります。

非獣医師が帝王切開する場合も問題点は、以下です。

1. 医学的基礎知識がない人が、見よう見まねで取得した手術は、安全性に欠け、また感染予防、疼痛管理、術後のケアが不十分になる。
2. また、医学苦的基礎知識がないゆえ、手術中、および術後に合併症が起こった場合、対処の仕方を知らない、できない、あるいは、対応できる器具器材、薬品がない。
3. 手術器具や麻酔薬の違法的な入手ルートが、すでにあるということ。
4. 麻酔薬を非獣医師が使用することは、麻薬取締法に違反。
5. 鎮痛薬、抗生剤など、手術後に必要な薬物も、獣医師以外の人は、正式に購入できない。
6. 痛み、苦痛に対する配慮が、正当になされていない可能性がある。

ある人は、「麻酔なんか使わずに、帝王切開しているのでは」と言っていました。もし本当だとしたら、これはもう、動物虐待以外の何物でもありません。

手術器具、麻酔薬入手の非公式ルート


非獣医師が帝王切開を行うことがあったとすれば、手術に使う器材(メス、鉗子など)や、麻酔薬等が、非公式なルートで、売買されていることになります。あるいは、盗難されているということでしょうか。
横流しに関与している、獣医師がいるのかもしれません。
あるいは、動物病院の従業員などが、こっそりと、盗んでいるのかもしれません。
あるいは、動物関係の器具薬品を扱う、卸売りの業者が、不法に販売するという形で関与しているのかもしれません。
まずは、動物病院の院長、獣医師、動物看護師などのスタッフは、麻酔薬、薬物、および外科器具に対して、監視の目を強くする必要があると感じます。
もちろん、自分の動物病院内に、薬物などを窃盗、横流ししている人がいると疑いたくはありません。
しかし、これも時代の流れです。
医療に関わる者の責任として、薬物や器具の監視は、現在の従業員の盗難の有無に限らず、時代とともに強化するべきでしょう。

アメリカの医療薬品、器具の予防対策

一般的には、以下のルールに従うように心がけている動物病院が多いです。
・麻酔薬、鎮痛薬は、専用ボックス等に保管し、常に鍵がかけられ、1人か2人の限られた責任者しか開けることができない。
・麻酔薬、鎮痛薬は、ボックスから取り出し、使用量だけ注射器で吸い、すぐに薬物をボックスにもどす。薬品のビンを、1秒たりとも、ボックス以外のところに置かない。
・多くの麻酔薬ボックスは、アメリカでは鍵ではなく、指紋認証のものを取り入れ、またコンピュータが使用を自動記録をし、誰がいつ開いたか、記録が残るようになっている。
・一般の薬品置き場、注射器などの医療器具置き場、備品倉庫なども、夜間は鍵をかけている。24時間体制の監視カメラも設置している。
・同様に、手術器具の保管場所にも、夜間は鍵をかけるようにしている。
・薬品、麻酔、器具の注文に関しては、以下のルールを守るようにしている。
・注文をする人と、配達された注文品を開けて確認する人は、必ず別々の人物であること。これは盗難予防の大原則です。
・購入業者に支払いをする人は、紙面やコンピュータの記録だけではなく、頻繁に薬品庫に出向いて数量確認をするようにしている。
・薬品や薬物は、コンピュータ管理をし、ビンやバイアル、ボトル単位で数が合わない場合は、盗難を疑う。(入荷時に入力し、使用する度にコンピュータが残量を表示)。

細かいことですが、不正予防のためににも、各動物病院側が、責任を持って管理する。アメリカではここ10年で、ずいぶんと認識が高まってきました。

立ち入り調査がきびしく実行される?

今後、法が具体化することにより、地方自治体が第一種、第二種動物取扱業の施設をチェックし、場合によっては警察も同行して現場に立ち入ることもある、と聞きます。
ぜひとも、法の文章だけではなく、実行力のある法にしていただきたいです。
さて、立ち入りのチェックは、今後、どの程度まで厳しく行われるようになるのでしょうか。
できれば、施設内の動物の一匹一匹の状態まで観察し、痩せているとか、医療手当が早急に必要と思われる個体まで、指摘し、さらに、必要に応じてその場で保護することができるのが理想です。

具体的には、今後、以下を目標にしていただきたいです。

各個体の現在の状態
改善指導と、緊急保護が必要な場合があります。

環境のチェック
不衛生、温度、証明、排泄物、ケージの広さ他。数値化が有効ですね。

過去の動物の記録
出産回数、帝王切開の回数の信ぴょう性のチェック。記録には帝王切開歴がないのに、帝王切開を行った傷が腹部にある個体の摘発、など。

医療不正の疑いがあるかどうか
麻酔薬、医療器具、消毒薬、手術用バリカン、注射器、抗生剤、ガーゼなど、備品や在庫が必要以上にあるか、手術器具を所有しているかどうか、などの捜査。
これは動物愛護団体にも、適応されるべきことと思います。
愛護団体でも、獣医師が関わることなく、自分の判断で薬物の使用や治療をするべきではありません。

会計記録と動物記録の照合
例えば、オークションで子犬を売った時の収入と、出産記録がマッチしなくてはならなりません。
正式な記録を隠して何度も繁殖させないために、必要です。

まとめ

今回の数値化は、大きな一歩であり、また将来に対して、大きく門を開くことになる朗報だと感じています。
しかし、上記のように、この法改正により、現場のすべての問題が一挙に解決するとも思えません。
今後、さらに現場で起こっている問題点をさらに意識し、法律だけではなく、動物に関わる全ての人が、自分にできる事から始めていくべきと感じています。

非獣医師による帝王切開手術が、このまま闇で続かないように。

薬物の不正売買や、獣医師が関与しない医療行為(自分で判断して抗生剤を与えるなど)が行われないように。

医薬品の販売業者も含めて、医療関係者一人一人がしっかりとし、さらに監視を強化をしていただきたいです。

また、悪徳ブリーダーだけではなく、優良ブリーダーも、動物愛護団体、猫カフェ、老犬ホーム、ペットホテルやトリミングサロンも含めて、動物を扱う人たちすべてが、今回の数値基準を知り、「どんなに最低でもこれ以下はダメ」という認識を、現場に反映していただきたく思います。