アニマルホーダーの分類 <多頭飼育崩壊をなくすために >

2020年6月23日動物愛護,多頭飼育崩壊

動物保護活動ボランテイアの多頭飼育崩壊

長年、保護活動をされているボランテイアさんが、多頭飼育崩壊になり、保護された多くの動物たちが、遺体で発見され、また、痛々しい状態で保護された動物もいる、というのをニュースで知りました。

犠牲になった動物たちのご冥福をお祈りいたします。

今日は、昨今、問題化している多頭飼育崩壊について、その原因について分かっていることを紹介したいと思います。
以下は、複数の資料を基に、自分の意見を加えてまとめたものです。

多頭飼育崩壊とは

多頭飼育崩壊は、以下の条件がそろった状態を言います。

1.複数の動物が飼育されている施設、あるいは家であること。

2.飼育頭数が多いため、世話をする人が飼育できる能力の限界を超えていること。
これは、経済的限界、時間的限界、その両方の場合もあります。

3.能力の限界を超えた飼育を続けることにより、動物が削痩、飢餓状態になり、過剰繁殖したり、場合によっては死亡したりします。ノミのような外部寄生虫や伝染病、皮膚病などが蔓延することが多々あります。当然病気になっても、医療手当を受けさせてもれません。環境衛生が著しく悪化し、糞尿まみれの不衛生な環境、寒暖の激しい不快な空間で生活を強いられます。

4.多くの場合、吠え声や悪臭などにより、近所からの通報を受け発覚し、動物虐待の疑いということで、行政や警察が関与すること。

このような状態になるのを、多頭飼育崩壊と総称しています。

法医学的には、多頭飼育崩壊は、集団ネグレクトと呼ばれ、ネグレクトの一種であり、動物虐待の一つの形とされています。
そして、自分の能力以上の複数の動物を、上記のような粗悪な状態で、多数の動物飼う人のことを、アニマルホーダーと呼んでいます。

アニマルホーダーの3つのタイプ

しかし、複数の動物を飼っているからといって、すべての多頭飼育者が、皆がホーダーではありません。また、何頭以上飼っているからホーダーになり、何頭以下なら大丈夫、というものでもありません。

10頭で崩壊する人もいれば、もっと多くの動物を、(従業員やボランテイアなどの人手を利用しながら)、ちゃんとお世話している人もいます。

多くの人は、複数の動物を飼いながら、きちんと世話をし、衛生的な環境を維持し、各動物は健康に生活しています。

多くの日本の愛護団体も、多数の保護動物のお世話をしながら、動物の状態や環境衛生に気を配って、しっかりと管理しているのを、知っています。

アニマルホーダーには、3つのタイプがあります。おおまかに3タイプとされていますが、中には、タイプが重複していることもあります。

ホーダータイプ1 限界を超えてしまったタイプ

このタイプのホーダーは、以下の特徴があります。

・現状に対して認識しており、何とかしなくてはならない、というのは分かっている。
・積極的に動物を保護、収集したのではなく、やむを得ない状態から増えてしまったケースが多い。(引き取ってしまった、繁殖してしまった、など)。
・何かをきっかけに、ホーダー状態になることが多い。(家族の死亡、軽い認知症、一人暮らし、腰を痛めた、など)
・何とかしなくてはと分かっていても、できない。
・社会的に孤立している人が多い。
・動物たちの世話をしなくてはいけない、という責任感は持っている。
・動物を手放すことに関しては、それほどもめない。

高齢者や、経済的貧困の方、などがこのケースに入る場合が多いかと感じます。

ホーダータイプ2.レスキュータイプ

・動物を保護するという強い使命感がある。
・自分が保護しないと死んでしまうと思う。
・積極的に動物を入手する場合と、消極的に引き取ってしまう場合とがある。
・保護して譲渡していたのが、いつのまにか、保護するだけになってしまう。
・一人ではなく、グループや、ネットワークでつながっている団体であることもある。

ホーダータイプ3. 社会病質者タイプ

・人を食い物にするペテン師的な性格
・人や動物に、感情移入はしない。
・原因には無頓着
・他人の助言は聞かない。
・表面的な性格。
・自分に非はないと思っている。
・悪質に操作したりする
・自分だけのルールで相手を封じる。

多頭飼育の被害者たち

多頭飼育崩壊が起こった時、実際にはとてつもなく多くの方が巻き込まれて、多方面の人たちが、損害を被ることになります。

・多数の動物が不健康、病的、あるいは死亡した状態で発見される。
・多数の動物を一度に、緊急性を持って保護しなくてはならない。
・そのために、複数の動物愛護団体や行政施設が協力することになる。
・場合によっては、ホーダーが飼い主権を主張し、動物を手放さない事を主張して、もめる。
・人慣れしていない動物も多く、捕獲機を導入したり、捕獲に時間を要したりすることもある。
・保護する場所。
・あまり慣れていない保護した動物たちを、順化して譲渡するための労力。
・緊急保護した動物を診察、手術、診断、治療、入院する動物病院が必要。
・緊急不妊去勢手術。
・動物たちで半破壊された住居の清掃、修復。大家さんの損出。
・清掃、害虫駆除、ゴミ処理。
・行政機関、警察機関による捜査、調査。
・訴訟(民事、刑事)。動物虐待の罪、詐欺罪(寄付金を受け取っていた場合)
・ホーダー飼い主のその後のケア。(特に家族で、子供も同居していた場合など)

多頭飼育崩壊の予防

いったん多頭飼育崩壊が起こると、多くの機関、関係者、人が巻き込まれ、お金も時間もかかり、大きな時間的、社会的損出になります。

そして何より、尊い動物たちがネグレクトに苦しんだり死亡したりします。多頭飼育崩壊は、起こる前に、予防しなくてはなりません。まだ、小さなうちに、早期発見しなくてはなりません。

今回の日本の多頭飼育崩壊は、多くの動物保護活動をされている方には、ショックであったと思われます。しかし、上記のように、保護活動をしているから、多頭飼育崩壊になった訳ではありません。

私たちは、多大な努力をして、センターの殺処分数を、確実に減らしてきました。動物保護活動をするボランテイアの努力なしには、達成できなかったものです。

どうか胸をはって、正しい保護活動を続けてください。多頭飼育崩壊の予防アプローチについては、次回、また詳しくお話したいと思います。

2020年6月23日動物愛護,多頭飼育崩壊

Posted by Dr. Yuko Nishiyama