アニマルホーダーの分類 <多頭飼育崩壊をなくすために >
動物保護活動ボランテイアの多頭飼育崩壊
長年、保護活動をされているボランテイアさんが、多頭飼育崩壊になり、保護された多くの動物たちが、遺体で発見され、また、痛々しい状態で保護された動物もいる、というのをニュースで知りました。
犠牲になった動物たちのご冥福をお祈りいたします。
今日は、昨今、問題化している多頭飼育崩壊について、その原因について分かっていることを紹介したいと思います。
以下は、複数の資料を基に、自分の意見を加えてまとめたものです。
多頭飼育崩壊とは
多頭飼育崩壊は、以下の条件がそろった状態を言います。
1.複数の動物が飼育されている施設、あるいは家であること。
2.飼育頭数が多いため、世話をする人が飼育できる能力の限界を超えていること。
これは、経済的限界、時間的限界、その両方の場合もあります。
3.能力の限界を超えた飼育を続けることにより、動物が削痩、飢餓状態になり、過剰繁殖したり、場合によっては死亡したりします。ノミのような外部寄生虫や伝染病、皮膚病などが蔓延することが多々あります。当然病気になっても、医療手当を受けさせてもれません。環境衛生が著しく悪化し、糞尿まみれの不衛生な環境、寒暖の激しい不快な空間で生活を強いられます。
4.多くの場合、吠え声や悪臭などにより、近所からの通報を受け発覚し、動物虐待の疑いということで、行政や警察が関与すること。
このような状態になるのを、多頭飼育崩壊と総称しています。
法医学的には、多頭飼育崩壊は、集団ネグレクトと呼ばれ、ネグレクトの一種であり、動物虐待の一つの形とされています。
そして、自分の能力以上の複数の動物を、上記のような粗悪な状態で、多数の動物飼う人のことを、アニマルホーダーと呼んでいます。
アニマルホーダーの3つのタイプ
しかし、複数の動物を飼っているからといって、すべての多頭飼育者が、皆がホーダーではありません。また、何頭以上飼っているからホーダーになり、何頭以下なら大丈夫、というものでもありません。
10頭で崩壊する人もいれば、もっと多くの動物を、(従業員やボランテイアなどの人手を利用しながら)、ちゃんとお世話している人もいます。
多くの人は、複数の動物を飼いながら、きちんと世話をし、衛生的な環境を維持し、各動物は健康に生活しています。
多くの日本の愛護団体も、多数の保護動物のお世話をしながら、動物の状態や環境衛生に気を配って、しっかりと管理しているのを、知っています。
アニマルホーダーには、3つのタイプがあります。おおまかに3タイプとされていますが、中には、タイプが重複していることもあります。
ホーダータイプ1 限界を超えてしまったタイプ
このタイプのホーダーは、以下の特徴があります。
・現状に対して認識しており、何とかしなくてはならない、というのは分かっている。
・積極的に動物を保護、収集したのではなく、やむを得ない状態から増えてしまったケースが多い。(引き取ってしまった、繁殖してしまった、など)。
・何かをきっかけに、ホーダー状態になることが多い。(家族の死亡、軽い認知症、一人暮らし、腰を痛めた、など)
・何とかしなくてはと分かっていても、できない。
・社会的に孤立している人が多い。
・動物たちの世話をしなくてはいけない、という責任感は持っている。
・動物を手放すことに関しては、それほどもめない。
高齢者や、経済的貧困の方、などがこのケースに入る場合が多いかと感じます。
ホーダータイプ2.レスキュータイプ
・動物を保護するという強い使命感がある。
・自分が保護しないと死んでしまうと思う。
・積極的に動物を入手する場合と、消極的に引き取ってしまう場合とがある。
・保護して譲渡していたのが、いつのまにか、保護するだけになってしまう。
・一人ではなく、グループや、ネットワークでつながっている団体であることもある。
ホーダータイプ3. 社会病質者タイプ
・人を食い物にするペテン師的な性格
・人や動物に、感情移入はしない。
・原因には無頓着
・他人の助言は聞かない。
・表面的な性格。
・自分に非はないと思っている。
・悪質に操作したりする
・自分だけのルールで相手を封じる。
多頭飼育の被害者たち
多頭飼育崩壊が起こった時、実際にはとてつもなく多くの方が巻き込まれて、多方面の人たちが、損害を被ることになります。
・多数の動物が不健康、病的、あるいは死亡した状態で発見される。
・多数の動物を一度に、緊急性を持って保護しなくてはならない。
・そのために、複数の動物愛護団体や行政施設が協力することになる。
・場合によっては、ホーダーが飼い主権を主張し、動物を手放さない事を主張して、もめる。
・人慣れしていない動物も多く、捕獲機を導入したり、捕獲に時間を要したりすることもある。
・保護する場所。
・あまり慣れていない保護した動物たちを、順化して譲渡するための労力。
・緊急保護した動物を診察、手術、診断、治療、入院する動物病院が必要。
・緊急不妊去勢手術。
・動物たちで半破壊された住居の清掃、修復。大家さんの損出。
・清掃、害虫駆除、ゴミ処理。
・行政機関、警察機関による捜査、調査。
・訴訟(民事、刑事)。動物虐待の罪、詐欺罪(寄付金を受け取っていた場合)
・ホーダー飼い主のその後のケア。(特に家族で、子供も同居していた場合など)
多頭飼育崩壊の予防
いったん多頭飼育崩壊が起こると、多くの機関、関係者、人が巻き込まれ、お金も時間もかかり、大きな時間的、社会的損出になります。
そして何より、尊い動物たちがネグレクトに苦しんだり死亡したりします。多頭飼育崩壊は、起こる前に、予防しなくてはなりません。まだ、小さなうちに、早期発見しなくてはなりません。
今回の日本の多頭飼育崩壊は、多くの動物保護活動をされている方には、ショックであったと思われます。しかし、上記のように、保護活動をしているから、多頭飼育崩壊になった訳ではありません。
私たちは、多大な努力をして、センターの殺処分数を、確実に減らしてきました。動物保護活動をするボランテイアの努力なしには、達成できなかったものです。
どうか胸をはって、正しい保護活動を続けてください。多頭飼育崩壊の予防アプローチについては、次回、また詳しくお話したいと思います。
ディスカッション
コメント一覧
京都の事件の方の譲渡会に行った事があります。譲渡会で気に入ったプードルがいました。よく主人話しあって、その日のうちに連絡しましたが、もう決まったと言われました。そんなにすぐ?と思いましたが、あきらめました。
その後、2年前の冬、近所のダックスが寒い中毛布もない小さい犬小屋に繋がれて可愛そうな状態だったので保健所に相談し、保健所から飼い主は貰ってくれる人がいればあげてもいいと言っているとのこと。信頼しているボランティアの方に相談したところあの方を紹介され、連絡を取ったところ、寄付を要求されました。
飼い主の方が気が変わって、買い続けると仰ったのであの方にはダックスちゃんは渡らずに済みました。
その時は立派な方だと思っていたのでプードルの時には基準が高いんだなと思いましたし、寄付の話しが出たダックスちゃんの時には犬1匹の飼育にどれだけお金がかかるか知っている私は当然だと思っていました。
でも、あのミイラの犬の映像や床中に死骸となって積み重なっている映像を見て、言葉が出ませんでした。朝まで眠れず、ダックスちゃんの飼い主が気を変えなければあのダックスちゃんはあの死骸の中の1匹になってしまっていたかも知れず、私は飼い主さんに対して負いきれない謝罪の気持ちと向き合っていかなければならなかったかも知れないと思うと胸が苦しくなりました。
譲渡会でうちの主人の膝の上が気持ち良さそうにしていたプードルもあの死骸の山に埋もれているのかと思うと本当に苦しいです。
彼女は本当に動物を救いたかったのですか?
譲渡会を開いても譲渡しない。ただ動物を集めたかった?たくさん預かる事で人からの称賛を得たかった?
寄付として入ってくるお金を集めるために次々動物を預かった?
色んな愛護団体がありますが、本当に動物を愛するボランティアなのか見極めなければならない。
あの事件は多頭飼育崩壊ではなくてただネグレクトの虐待目的またはお金目的のために動物を集めて虐待していたということだと感じています。
ドリー様。コメントありがとうございます。
お話を伺うだけで、悲惨な状況が伝わり、胸が痛みます。
また、一歩間違っていたら、どうなっていたか、という危機感の共有もありがとうございます。
今回の事件は、ネグレクトと、金銭詐欺の両方が関係しているように想像します。
これから、動物保護活動が、外部からきちんと監視されるシステムの構築と、
活動自体が透明化していかなくてはなりません。
各愛護団体が、自分の能力を知り、把握することは簡単ではありませんが、
今後、推進してゆく課題と思っています。
今回の事件で、保護活動をされる方全員、愛護団体全般を否定するような評定にならないよう、
今私たちができる事は、冷静になり、
2度とこのような惨事が繰り返されないよう、予防策を考えることかと思います。
実際にまじめに、保護活動されている方の経験と知恵を集めて、さらによい動物福祉社会をめざしましょう。
西山
京都のボラの事件、他の多くの多頭飼育崩壊とか、アニマルホルダーとはちょっと異質だと感じていました。これまで1や2のタイプは多く見て来ましたがこの3というタイプが存在するのですね。
先生の説明でこういう事なのかと理解しました。
かわいそうな犬猫を保護してキャパ超えたとか、不妊させず増えてしまったとかではない。この人はわざわざ他の団体とか個人ボラから自分から積極的に預かり引き受けて集めてるし、ボラ長いことしている事から不妊とか健康管理とかの知識も一般の人よりもある。しかも頭はしっかりしてて、裏工作して嘘ばっかりついてたちが悪すぎる。
そしてなによりも、残酷すぎて、狭いキャリーに入れっぱなしで放置して殺してる。
すぐに死ねないから苦しみは想像を絶します。
そして預かり受けた団体の人に、発覚後にも、いかにも自分が犬の事を気にかけている様な発言。
これ、ほんとにちゃんとやった事に対して処罰されて欲しいです。
亡くなった子たちに平安と慰めがあります様に。
さいさん
コメントありがとうございます。
ホーダーは、様々な要因が複雑にからみ、発生するようです。
どのケースも、解決は簡単ではないと感じます。
今回の京都の事件、早く真相究明してほしいですね。
今後、また保護施設の多頭飼育崩壊が起きないように、
できうる限り、対策を考えたいですね。
本当に、犠牲になった動物たちの事を思うと、心が痛みます。。
西山
私も猫ボランティアをしている中で、ボランティアの崩壊案件に携わることの方が多いように感じています。
きっと最初は優しさから始まり、自分のキャパを超えても保護を続けたり、はたまた多頭現場だとご寄付や支援がたくさん集まることに味をしめて、あえて目立つ多頭現場を優先しているような感を受けることもあります。
可能ならば、ボランティアが断りやすいルール(預かり頭数の制限)、行政から迎えた際のメリットなどがあれば、
預かり頭数を超えたから預かり不可の旨を伝えられたり、
そういう時に行政に相談・保護を依頼出来る仕組みがあるのが最善だと思いますね。
でも行政=殺処分の考えが浸透している現在、結果としてボランティアに泣きつかれる保護主が多いのも事実ですから…良案を見つけるのも難しいですね?
ねこだよ様
コメントありがとうございます。
はい、おっしゃる通りだと思います。
動物の保護活動をされている方は、自分の限界を、把握することが必要です。
限界とは、時間的、金銭的、それから、マンパワー(お手伝いのボランテイアの数)などを、総合して判断することかと思います。
また同時に、自分で判定する以外にも、行政指導なり、法規定なり、ルールなりが構築され、飼育頭数に制限を設けるのも1つアプローチかと思います。
そこで今急がれているのが、数値規制の設定です。基準が明確になると、守られやすくなります。
少しづつですが、制度的に、多頭飼育崩壊が起こらないように、改善しなくてはいけないですね。
西山ゆう子