アニマルホーダーになりやすい人 <多頭飼育崩壊をなくすために>

動物愛護,多頭飼育崩壊

アニマルホーダーはどこにいる?

  1. 多頭飼育崩壊について、シリーズで紹介しています。
  2. どのような人が多頭飼育崩壊を起こす可能性が高いのか。
  3. どのタイプの人に発生傾向があるのか。
  4. そして、それぞれの、予防対策について、ここでは分析したいと思います。

これは、複数の資料を基に、私自身の意見としてまとめたものです。参考資料として、お読みいただけたらと思います。

アニマルホーダーになる可能性のある人

では、どういった人たちが、アニマルホーダーになるのでしょうか。

一般に、ホーダー化しやすい人や施設というのは、以下の3つがあげられます。

1. 多頭のペットを、飼育する人や施設
2. 強迫性障害のある人
3. ディオゲネス症候群の人

あたり前ですが、これらの施設や人が、すべて、多頭飼育崩壊が起こる訳ではありません。
ペットを多頭飼育している人がすべて、ホーダーではありません。
また、上記の精神障害や、症候群のある人が、すべてアニマルホーダーになる訳ではありません。
しかし、研究により、この3つの施設や人は、将来、アニマルホーダー化する傾向がある、ということが分かってきています。
よって、将来、このような施設や、精神疾患のある方を中心に、定期的に調査する、チェックする体制が構築されれば、多頭飼育崩壊が予防できることになります。

危険要因1 多頭のペットを飼育する人や施設

これには、個人、営業目的、NPO法人など、様々なものが含まれます。

・動物愛護団体
・個人の飼い主
・ペット産業の生産者―ブリーダー、繁殖業者など
・ペットの販売業者―ペットショップ
・猫カフェ、ドッグカフェ
・ペットの看取り施設―老犬ホーム、ホスピス、引き取り屋
・合宿制のドッグトレーニング施設
・行政の動物収容施設―センターなど
・動物実験施設

今回の法改正で、数値化による規制が決まりました。

数値規制は、生産者だけではなく、動物を複数飼育する施設すべてに適応されるべきであると思います。
上記のような、ペットを多頭飼育する場所は、ペット業者も愛護団体も、すべて、定期的にチェックや監視が入り、必要に応じて勧告や営業停止ができるようになれば、多頭飼育崩壊を初期段階で防ぐことができるでしょう。

危険要因2 強迫性障害のある人

精神疾患の一つで、強い不安やこだわりによって、ある事に度を超えて、繰り返し行動を行う病気のことを言います。
強迫性障害の中にも、さらにいろいろ分類され、様々な形の障害があります。

・自分の手が不潔である恐怖から、ずっと手を洗わずにはいられない人。
・外出時に鍵を閉めたか、窓を閉めたか気になって、何度も確認しなくてはいられない人。
・いつか必要になるかもしれないので、物を捨てられずに、ゴミ屋敷にしてしまう人。
・自分がこのペットの世話をしないと、死んでしまう、殺処分されてしまう、という恐怖感から、飼育できないのに引き取ってしまう、という人。
・その他にも、様々なタイプの強迫性障害があります。

その人にとって、こだわり、恐怖の対象となる物が、ばい菌であったり、ゴミであったり、と対象は異なるけれど、これらは「脅迫精神障害」という同じカテゴリーの疾患になります。

個人の権利や医療情報、プライバシーの問題などもあるので、特定の病気の人だけを対象に家庭訪問することはできません。

しかし、例えば、この疾患を診断した医師は、患者に、「家にはペットを何匹飼っているか」、という質問をするようにし、必要に応じて、管轄の自治体に通報する制度ができれば、予防できるかもしれません。

危険要因3 ディオゲネス症候群

主に高齢の方に発症し、自分のこと、まわりのことに無関心、無頓着になり、衣食住といった基本を怠ってしまう一連の行動のことをいいます。

特に一人住まいの人に多く発生し、自分も部屋も、ものすごく汚くしたままでも、何もしないでほったらかし、という状態です。

布団を敷きっぱなし、食器も洗わず、自分は風呂にも入らず、爪や髪、髭などは伸ばしっぱなし。家に引きこもり、ゴミなども家にため込み、外との交流やヘルプを避けたがる、といった傾向があります。

これらのディオゲネス症候群の傾向がある人が、ペットを飼うと、ホーダー化する危険性があるということが、わかっています。

ディオゲネス症候群の人から、多頭飼育崩壊を予防するにはどうすればよいのでしょうか。

これはやはり、一人暮らしの高齢者を見守る、というコミュニテイーの強化からアプローチするのがベストではないでしょうか。

このような症候群の人を見守り、発見し、ヘルプをするというシステムは、人と、それから動物という両者を救うことになります。

アニマルホーダーの「芽」を見張る

多頭飼育崩壊は、多くは何十、何百というペットが、悲惨な状態で発見されます。すでに、餓死、病死、ケンカリンチによるショック死の場合もあります。

崩壊時には、生存者(ペット)を救済するために、愛護団体、ボランテイア、行政、個人、動物病院など、多くの人が巻き込まれます。

多頭飼育崩壊は、予防しなくてはなりません。まだ、芽が小さい時に発見し、何等かの対策、処置をするのがベストです。

アニマルホーダーになりやすい場所、人が判明しているのですから、これらを中心に、皆で知恵を集めて、今後の対策を考えていきませんか。

ホーダーの芽を探せ。

ちいさいうちに保護すれば、動物の犠牲者が減ります。そして何より、ホーダーになって苦しむ、その方本人も、助けてあげることができるのですから。

動物愛護,多頭飼育崩壊

Posted by Dr. Yuko Nishiyama